袖がない!
帆のデザイン性重視で、劇場の機能性が後回しになったため、全5つある劇場のどれにも袖がない!デザイン設計は、デンマーク人の建築家ヨーン・ウツソンが1957年にコンペで提案したもの。しかし、構造や機能を手探りで建築することになったため、当初提案した建設期間と予算を大幅にオーバーし、1966年オーストラリア政府は、オーストラリア人の建築家3人に託すと決断。実際に劇場の構造や機能を推進し仕上げたのはピーター・ホール氏だった。帆のデザインの方向性で劇場としての機能性を持たせる調整をウツソンは何度か行っていたものの、ピーターは、帆のデザインありきで中身を作ることになった為、どの劇場も袖がない構造のまま。舞台装置は、専用リフトで舞台裏にあげるのと、吊り物バトンの数は充実させたそう。
ちなみに、1973年のオープニングにもウツソンは招待されなかった。しかし、オーストラリア政府が正式に謝罪した後、2003年にプリツカー賞受賞、2007年にシドニーオペラハウスはユネスコの世界遺産に登録された。
コンサートホール_シドニー交響楽団の本拠地
パイプオルガンを中心にアリーナのような楕円形の木材で作られた劇場。約2700席。シドニー交響楽団の本拠地で様々なコンサートを行ってきた。天井高さ22メートルと高過ぎて、オーケストラの演奏者に返しが聞こえるまでに2.5秒の時差ができてしまったことから、ステージ上にガラスの輪っかが18個あり、演奏者の人数によってその高さを変えて調整するそう。今はブロードウェイのマジックショーIllusionist上演中。このように客席を一部潰して、舞台を組んでいる。元々は、オペラ・バレエもココで上演する想定だったそうだが、シドニーは演奏者は良くても演奏場所が教会や市のホール等だったことから、交響楽団専用にすべきだという声が上がり、オペラ・バレエが上演されたことは一度もない。吊り物も舞台装置レベルでは難しく、大掛かりな舞台転換もできない為、ミュージカルの上演もない。が!!来年1月初めてブロードウェイミュージカル「In the Heights」が上演される!!!2020年から3年間改装工事に入るので、これは見逃せない!
Joan Sutherland Theater_ Opera Australia, The Australian Ballet
オーストラリアオペラ・バレエの本拠地。オペラに馴染みのなかったオーストラリア人を、「世紀の歌姫・ジョーンサザーランド」が目覚めさせてくれた功績から、この名前に変更されたそう。こちらの引退公演の写真は大きくバックステージに飾られていた。
オペラ歌手がマイク無しで声が響き渡る設計に、口の中の上部を真似して天井を制作。袖がないので、舞台装置は舞台裏のリフトで上げ下げ。舞台の真下に舞台と同じ大きさ+舞台裏リフトの舞台装置倉庫が
ある。また、当初は演劇を想定していた為、袖にいく階段が狭く、大きなオペラの衣装で歩けないことも多く、下着で上がり、舞台裏で衣装に着替えることも。バレエは、袖に勢いよく踊りきれないので、ダンサーキャッチャーや当たって安全なマットを置き、ぶつかって怪我をしない工夫をしているそう。バレエ専用劇場のマリンスキー劇場やパリのオペラ座は傾斜のある舞台だったが、ココでは傾斜はなし。オーストラリアバレエはオペラハウスの中でも一番人気だそうで、年間プログラムが発表されると、一番に売れていくのはバレエ。ローカル80%、観光客20%の観客層の比率なので、バレエの人気作品を観光客がゲットできるのはかなり貴重だそうです。 オケピにネットがかかっているのは、以前舞台上にいた鶏がバイオリニストとチェロ奏者の頭に落ちてきて10分間中断したことがあったから。オーケストラは最大70名入れる広さ。指揮台は、足元を見るバレエの高さと演者の表情を見るオペラの2種類の高さに調整可能。
マエストロ等、一番良い楽屋にはスタンレーのグランドピアノと絵画、絶景が揃っていました。
Drama Theater _ Sydney Theater Company本拠地
ここも袖がない舞台監督の卓横のドアを開けると舞台。吊りバトンも照明でほとんど使いきる。先日、シドニーシアターカンパニーの公演を観たら映像を活用しており、この後ろの壁をそのように活用する演出が好評を得ているそう。舞台後ろは搬入口でガレージのように全面開くので、ミュージカル上演をした際は、搬入口エリアでバンド演奏し、ガレージを開けっ放しに上演したこともあるそう。
Playhouse
ここは吊り物バトンが充実している。子供用の演目を上演することが多く、今は子供が楽しめるバレエ・コッペリアを上演中。シドニーオペラハウスでは、バレエ上演の際、トーシューズで踊りやすいように、床を掃除する際に洗剤にコーラを混ぜるそう!
Studio
今回特別に見せてくれた飲食ができるパフォーミングスペース。座席もテーブル形式や劇場形式等、自在に組める。主にキャバレーやサーカス等、アルコールや飲食とともに楽しめる演目を上演。空中パフォーマンス、アリエルもできる。元々は、コンサートホールの下にある舞台装置保存庫の予定だった。しかし、オペラ・バレエの上演がなく、舞台装置のないコンサートホールとして使われることになった為、自由なパフォーミングスペースとして活用し始めたそう。ニューイヤーズ・イブのパーティーは、大いに盛り上がる大人のハッチャケ場所。
Utzom Room
ウツソンが唯一完成させたパフォーミングスペース。グランドピアノ1つがハーバー沿の大きな窓に面して置かれている。この絵画も彼自身が描いたもので、唯一ある彼の直筆サイン。印象的な黒のラインは知恵を表現しているそう。200名キャパで、小規模なミュージカルの上演をしたくて作ったスペースだそう。
建築は、このようにコンクリートで帆の形を形成し、中は木材が中心。屋根のタイルは、特注で、光の反射の加減を計算し、角度や大きさを決めたそう。白をクリーム色で挟むことでシドニーサンシャインを柔らかく取り込み、時間によって様々な表情を見せてくれる建築物になっているそう。エリザベス女王がオープニングセレモニーでたったコンサートホールのテラスからは、世界で二番目に幅が広いシドニーハーバーブリッジの絶対が見られる。しかも、実物・窓・45度せり出しているガラスの3面に見えるのがこだわり。
=====オージー舞台用語====
Chookas!!!
オーストラリア人のBreak a leg! 満員御礼だとChook(チキン)が食べられる!と喜んだことから、験を担いで今も使われているそう。
Prompt side 舞台上手をプロンプトサイドと呼ぶ。元々イギリスの演劇界で、上手側に台詞を伝えるプロンプターがいたことに由来。下手はオポジットオブプロンプトサイド。今は舞台監督の席がプロンプトサイドにある。
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