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  • 渋谷真紀子Makiko Shibuya

<稽古編>卒業公演「Dream Line」

 遂に、今週末は卒業公演「Dream Line」本番。オーストラリアから動画を毎日確認し、皆んなの日々の進化に胸が熱くなる。そんな生徒たちとの前半稽古。どんどん目が生き生きとしていった生徒達との濃密な時間を改めて振り返ろう。ステージングや細かい段取りは後半に集中してつけるため、前半は下地作り。


①「演じるのではなく、生きる。」”Live the moment”

 人としても全うしたい“丁寧に生きる”こと。舞台は生の芸術だからこそ、そこに込める熱量が心の奥まで伝わってくる。ミュージカルの稽古は、短時間で、歌/ダンス/台詞/ステージング等多大なる情報を覚え、それを表現へと昇華させていくが、今回は、生徒達の想いからミュージカルの名場面に繋がる構成なので、それぞれが自発的に作品を生きられるような稽古を心がけた。

 “listen” 全ては相手に反応することから始まる。結果に向かうのではなく、そのモーメントを懸命に生きること。マイズナー法に出会った19歳の私は、その作品で人としても大きな気づきがあり、それ以降の人生を変えてくれた。

 

 この大切な生徒たちが「等身大の自分たちのストーリーを伝える」作品をやるからこそ、「舞台で生きる」感覚を少しでも味わえる稽古がしたいと決めていた。

「コーラスライン」は、モノローグ形式だからこそ、リアクションが空気を作る。個々のストーリーのバトンをしっかり渡していかれるか。学校という場だからこそ、ディアナのシーンにある「感じて、感じて、感じて。」という演技メソッド、そこから皆んなで作り上げる空気が、掛け替えのないこの子達ならではの舞台に仕上がっていくと確信し、私も35名の生徒一人一人と向き合おうとした。

 具体的にやったことの抜粋を幾つか例で。

* 下記のエクササイズは、エマーソン大学院の演技クラス(Paula Plum:Elliot Norton Award複数受賞)・NYのMovement Theater Studio演出家向けEnsemble Creation・NYUのPhysical Theaterグローバルプログラムのアンサンブル力を鍛えるエクササイズ等をベースに考案


<例1:呼吸の連鎖>

・ 呼吸すること (無意識の意識化)

・ 呼吸を合わせる(レペティションエクササイズで自意識をなくし、相手に集中する。と言われるが、私にとっては、パートナーに呼吸を合わせることが一番相手の奥まで集中できて自意識をなくせると思うから)

→発展させて、2人→4人→8人…と全員で呼吸を合わせる(普段の呼吸なので、決して深呼吸のような大げさなことはせず、感じ合う)。文字通り“息を合わせる”を体現

→発展させて、リーダーを決めず、少しずつ感じたままに動く。アメーバーのように一体となって動く

→2人組に戻ってミラーゲーム。

→発展系:キャシーのMusic and the Mirror。(キャシー本人と彼女に自分を重ねる生徒・山下が、お互いに鏡の中の自分を見て踊るというシーンがDream Lineにある)

→発展系:二人の連動を、A:歌う人B:踊る人 のペアで。バックダンサー・バックシンガーと共にという設定で、いかに双方が通じ合って、相乗効果をもたらせるか。感じ合う・重ね合う・響き合うを体験。レペティションのように、歌っていても、踊っていても、自分ではなく、相手に集中しようとするエクササイズ

 初日は、見た目にもわかるような呼吸をしないと合わなかったり、それでも合わなかったり、合っているか合っていないか不透明だったりしたが、日に日に「目と目で通じ合う」ようになり、「息が合う」瞬間が生まれるようになった。すると、自然と涙が溢れだす子や、それが連鎖していき、歌と踊りの起点で繋がる瞬間が見られた時は、感動した。目が違った。生きていた。燃えていた。懸命だった。


<例2:リラクゼーションで広げる想像力>

・ 呼吸から始めてリラクゼーション。想像力を広げていき、それぞれ色々な空間を浮遊する

・ 地面の柔らかさや温度、日差しの強さ等、どんどん細かくしていき、ディアナのシーンの演技クラスのように、雪山に行ってみる

 人によって暗闇にいる子もいれば、ディズニーランドにいる子も。普段の家の中だったり、猫がそばにいたり。想像力が膨らむと見えてくる世界が広がっていく。見えてくる世界が広がると、歌詞に息吹が与えられていく。そのヒントを与えただけで、夢破れて・オンマイオウンの歌い方も一変。ディアナのシーンも、毎回違って、演技レッスンの生徒達が段取りじゃなく、「感じられてるか?」で空模様が変わるようになった


<例3:視点を集めるプライベート空間>

・ 日常の日課を全員が凝視する中で再現。いかに無意識になれるか

  大学院の演技クラスで皆んな大苦戦したエクササイズ。つい、デフォルメしたり、普段してないことやってしまったり、飽きさせてないか気になったり、笑いが起こると反応してしまったり、見られてる意識が飛ばせない。二十歳男性の朝目覚めてからの10分間程度を凝視した私達。ダンスも上手な二人なので、身体の使い方にそんな意識も見られたけど、うまく凝視と葛藤してた。キスシーンのような超プライベート空間やいつも受けているオーディションでの居方。究極的に「演技する」を飛ばし、その場にいることが求められる


<例4:ライフチャートからの「I Hope I get it」や歌>

・ ミュージカルで突然歌い出す?!を解消すべく

 自分の人生のハイライトをライフチャートにする。ハイとロウにタイトルをつけて。これは、新作ミュージカルを考える時に使うのだけど、だいたいそこは歌が入るポイントになる。ということで、何をバネ(きっかけ)に、なぜ歌うのか? 特に、最初の「I Hope I get it」は、どんな想いでオーディションに臨んでいるのか、経験や心情全て各々のストーリーが伝わるよう、ディスカッションしながら、自分が何を求めてココにいるのかを明確化していった。悔しい想いや挫折、希望を感じた瞬間があって、だからこそ歌いたい・踊りたい・舞台で生きていきたいって強く思う。これを演じるキャラクターでもやってみると、親友のように分かり合える?!


<例5:タブロ写真→キャラクター関係性からの朝の風景・エメラルドシティ>

・ 町の人達、生徒たち、市民、オーディションを受けてる人達等々。設定は個々人で振入れから始まることはよくある。今回は、それぞれがキャラクター性を起こすところからスタート。

 例えば、“美女と野獣”の「朝の風景」。宿題で考えてきた“●●な(性格や特徴)●●(パン屋・婦人等)”“ベルに対して●●と思っている”を元に、フランスの小さな町の朝の風景のタブロ(写真)を作る。風景の詳細を共有していきながら、キャラクターの個性をデフォルメしたり、関係性をわかりやすく発展させていく


②作品の自分ごと化

 この作品のモチーフ「コーラスライン」の登場人物達が生きてた世界を体感してもらう。1973年ニューヨークのショービジネスのドキュメンタリーミュージカルを、2019年東京の専門学校生が、どう自分達と重ねていかれるか。当時のアメリカの、出自・人種・ジェンダーアイデンティティ・家庭環境・憧れのアーティスト等が、今の彼らでいうと…等の情報を噛み砕くこと。マイケルベネットのインタビューを、通訳していきながら共有し、彼と出会ってもらう。私が、ニューヨークでバイヨーク・リーさんにお世話になっていた頃、ちょうどニョーヨークのパフォーミングアーツの生徒さんたちに、「コーラスライン」を演出されており、彼女のオフィスで習った「コーラスラインエクササイズ(相当キツイ筋トレ。脚の親指が伸びてないと指摘された時は、本当に“つま先まで”鋭くみてくださっていると驚いた。)」の一部をやってみたり。いわゆる、作品理解やキャラクター理解。

 

 教育の場だからこそ、この仲間で創る最後の作品だからこそ、“人”と向き合える時間に。細かいステージング等は後半につけていくことになっていたので、エクササイズから発展させて、自由にシーンを作っていく稽古で、それぞれの個性や目覚めに出会える時間でした。

 自分自身を感じる・相手を感じる(聴く・受け入れる)・空間を、周りを感じる・音楽を感じる・照明の光を感じる等々。呼吸を通じて自分と、相手と繋がる、空間を共有する皆んなと繋がっていく。台詞や歌も「なぜ言うのか?歌うのか?」がそれぞれの中に明確化し、相手を受けて、点と点を繋いでいくものになり、良い連鎖が生まれてきてます。

 共同演出のひのあらたさんが、ステージングや芝居を詰めていってくださり、生徒達の目の色も変わっています。画面からも熱さが伝わってきます。

 舞台での場当たり・通しを終え、今日は灯り合わせ。明日ゲネプロで、今週末は本番!生徒達が思いっきり生き抜く、彼ら達のストーリー「Dream Line」をぜひ観にいらしてください。



 日本芸術専門学校ミュージカルコース 平成30年度卒業公演

舞台「Dream Line」 2/9 16:00〜 2/10 ①11:30〜 ②16:00〜 (開場は開演時間の45分前からです。)

チケット代無料

https://nichigei.wixsite.com/graduation ←ご予約はこちらから 日本芸術専門学校 山王ヒルズホールにてキャスト、スタッフ一同お待ちしております