アメリカのStage Directors and Choreographers演出家振付家組合の会報誌より、面白かったことを抜粋。 注:長いインタビュー記事を主観で抜粋しております
■SDUK (Stage Directors UK)
英国では2014年に設立。演劇史から考えると、演出家組合がそれまでなかったのは不思議。米国は、Stage Directors and Choreographersと振付家も含まれるが、英国は演出家だけなのも特徴的。エクゼクティブディレクターのトーマス・へスコットさんへのインタビューより。
・質問式メンターシステム
若手にメンターがつき、演出助手やオブザーバーとして現場で学べる機会はあるが、幅広いキャリア段階の人達に機会が与えられるよう、組合に質問を投げ出し、それに答えたい・答えられる演出家をメンターにするシステム。例えば、「スタジオ稽古でやっておきべき事と、劇場でやるべき事はどう違う?」という仕事の質問はもちろん、演出キャリアはあっても「子供ができた。どう今後働いていかれる?」という質問も投げかけると現場を繋いでくれる。
毎回違うメンバーと孤独な立場にいる演出家に、キャリアに関わらず他の現場から学べる機会が第三者にとって作られるのは面白い。同じ立場で考える同士を持つというのは、この組合が作られた大きな功績の一つだそう。
・報酬改善による演出家の多様性
恵まれていそうなイギリスの演出家の平均給与は、フルタイムで働くマック店員の最低賃金より低い。平均だからピンキリだろうけど、とてもビックリ。
演劇の仕事は、非正規雇用・短期労働の極みで、これでは幅広い人材が育たない。金銭的に余裕がある人達ばかりが若い時から現場に入れ、続けていかれる環境。知的財産権の考え方で労働対価ではない考え方が必要。全体的に基本賃金が上がるという救いの手があればいいが、その見込みはないそうで、地道に交渉していく際、組合で最低賃金の設定等をすることの重要性を掲げる。アメリカだと、最低賃金の設定が、若手の機会を阻むから組合に所属しない方が機会は多い(非組合を探す)と助言もされたが、このカードをどう使うかは個人次第だと思う。
■Rachel Chavkin 「エディンバラフェスティバルからのシンデレラストーリー」
今年頭、日本版が上演された「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」のブロードウェイ版演出家。1月末までロンドンのナショナルシアターで上演されてた彼女が演出する最新のミュージカル「ヘイズタウン」(オルフェウスとユーリディシのギリシャ神話を題材にした寓話。フォークミュージシャンのアネ・ミッチェル作曲)が3月22日からブロードウェイでプレビュー開始。https://www.hadestown.com/#home
・イギリスは原点であり創作は続く 彼女は、卒業後、自己プロデュースして2年、必要なものは批評だとエディンバラフリンジフェスティバルに参加。応募するために、THE TEAMとカンパニー名をつけた。
アメリカ人としてのアイデンティティを扱った作品をなぜ外国で上演するのか? アメリカはアメリカ政治に夢中で言われることがある程度予測できる。イギリスの方がヨーロッパの一部で他国が入り混じる分、国際政治への感度が高く、そういう人達がどう思うかは面白い。第二次世界大戦後、ヨーロッパを芸術で結んでいくために作られたフリンジフェスティバルへの参加によって、非言語のアートフォーム、上演後パブが語り場になりそこから次へと繋がっていく環境、生活保護の人用のチケット価格もあり演劇が広く提供される環境が新鮮だった。
最近は「確証バイアス」を題材にマンチェスターを拠点にした作家と創作。自分と似たような外見で異なる政治的視点を持つ人と対話、視点を入れ替えた結果、益々それぞれの視点が強くなるというもの。私は、ボストンで彼女のRoosevElvisという劇を見た。セオドラルーズベルト大統領とエルヴィスプレスリーをモチーフに、両方とも女性が演じ、アメリカの“男性像“を問う作品だったと記憶してるが、演出的にフックは散りばめられてたけど、筋が通らないもどかしさがあった。友達とこれは”男性“アイコンを女性が演じることでの皮肉以上のメッセージが取れなかったねっと悲しい想いをしたのを覚えてる。彼女が今制作中の作品を説明するのを読み、切り口や概念とどう向き合うかプロセス思考で、最終的にそれがスタート地点に戻っても(繋がって結論に至らなくても)それはそれで面白いという思考なのかなっと思った。
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